術後の治療方針に感じた勘違い

 

乳がんは内臓の手術と違い、身動きも自由で食事も制限がない。
術後の傷の痛みも少なく、自由時間が長い入院生活は、産後の入院時の様に上げ膳据え膳の生活でした。

退院して1週間後、
初めての診察で切除したがん細胞の病理結果で、今後の治療方針を決める大事な日。
それと同時に私の場合、遺伝子検査の結果も知らされ、この日は一番メンタルが落ち込んだ日となりました。

私の病理検査の結果は
右胸→浸潤性乳がん(多発浸潤癌)・非浸潤性乳管がん(乳管内癌)
最大の大きさ→2.3㎝×2.1㎝
リンパ節転移なし
組織学的異型度→組織グレード2/核グレード2
ホルモン感受性→エストロゲン受容体(ER):スコア3b
        プロゲステロン受容体(PgR):スコア3b
がん細胞増殖因子→HER2陰性:スコア2+
がん細胞増殖能→Ki67:30%
ステージ2A

左胸→浸潤性乳がん
最大の大きさ→0.9×0.8
リンパ節転移なし
組織学的異型度→組織グレード1/核グレード1
ホルモン感受性→エストロゲン受容体(ER):スコア3b
        プロゲステロン受容体(PgR):スコア3b
がん細胞増殖因子→HER2陰性:スコア1
がん細胞増殖能→Ki67:5%
ステージ1

という結果

それに対しての見立ては
術後補助療法として、女性ホルモンががん細胞の餌となる私の場合、5~10年の内分泌療法(ホルモン療法)により、女性ホルモンを抑えるタモキシフェンを服用(閉経前)
放射線療法は全摘出していることと、リンパ節転移がなかったので不要でしたが、化学療法も再発リスクは低いと考えられ、おそらく不要という結果。
追加として
化学療法による再発リスク軽減効果を予測する多遺伝子検査(オンコタイプDX)、補助療法としてts-1(経口抗がん剤)の一年間の服用とのことで、私は方針決定をしなくてはならない。

術後患者として、正直わからない! 
頭が回らない・・・。
放射線も化学療法も不要という結果に、良かった良かった!では済まないのか?
もしも!
もしものことがある場合を考えての追加治療をどうするか?
そこに追加をするかしないかの差はどうなんだろうか?
安全策としたら、追加は保険として勧めるだろうが、果たしてそれが良い結果となるのかどうなのか?
私の母は、5年生存はできなかった。
追加をしなければどうなるんだろうか?
『タラレバ』が頭の中でぐるぐる回る・・・。

その1週間後の診察で
再発リスク軽減効果を予測する多遺伝子検査(オンコタイプDX)を受けて、抗がん剤治療が必要なのかを調べることはどうだろうか?と医師に提案してみた。
すると、主治医から検査を受けても0~100まであるスコアで低リスク・中間リスク・高リスクと分けられ、中間リスクになった場合、また悩むよ…と言われるとそりゃ悩みます。
私のミッション(最低20年生存)に確実がない分、悩むよね。
するとまた、主治医から『考えてきて』という時間を頂いた。

家に持ち帰り、そこから毎日タラレバの渦にどっぷりハマっていると、精神状態は不安定になりちょっとのことで涙が込み上げる。
不要と言われながらも、自分自身に希望が見えなくて、自分のカラダを信じていなくて人任せにしている自分がいた。

そのまた1週間後、治療方針の答えを伝えるのに主治医に伝えたことが、『ts-1の服用をします』という言葉だった。
だけど、主治医はまた『よく考えてきて』という返事で帰される始末。

何で?っていう思いをしながらまた家でタラレバの渦・・・
抗がん剤をするか?しないか?を予測する検査をすることを言えば、中間になったときまた悩む…と言われ
ts-1を飲むと言えばまた考えてこいという・・・。
よくよく考えて伝えているのに、なぜ跳ね返されるのか?
終いには私の思考はタラレバのストレスから
主治医はどんな答えが欲しいのだろうか???と怒りが込み上げてきた。

私の思考が違う方向へ回りだし、自分のカラダを治していくのに、人に答えを委ねている自分がいることに
はたと気づいた瞬間、主治医に怒っている自分が、『何で主治医に怒らないといけないのだろうか?』と
自分の思考が間違っているのに、主治医のせいにしている。
主治医は、技術と知識と経験とデーターを私に提供しているだけで、私のカラダを治してもらうっておかしい。
治すのは自分。
治すための情報をくれているだけ・・・。

人は簡単に思考が違う方向にわまりだすものだとびっくりした。

その2週間後、情報源が多くある方がいいと言いうことで、再発リスク軽減効果を予測する多遺伝子検査(オンコタイプDX)を受けて判断することに主治医の提案に納得し決めた。
最初の振り出しに戻っただけなんだけど、ここまでの時間は何だったのか?
とモヤモヤしながらも
その2週間後の検査結果はなんと、再発リスクスコアが0~100の内、『3』という低リスク!
思わず主治医も『見たことがない低いスコア』と安堵したのもつかの間。

『で、ts-1はどうする?』
と私に投げかけてくる・・・
???
抗がん剤が低リスクと検査で出たのに何で、ts-1(経口抗がん剤)を服用するかを聞いてくるの???
主治医曰く、ts-1の服用に値する検査は別だといいだす。
それ、初めて聞いた!
抗がん剤の検査はts-1も入っていると思っていたから、検査を受けたのに、もしや、この検査は私にはいらない検査だったのでは?と疑ってしまう。

そもそも、私に推奨されているのはts-1を服用するか?と言う事。
再発リスク軽減効果を予測する多遺伝子検査(オンコタイプDX)は点滴抗がん剤の検査らしい。
このことは調べて後でわかったことなんだけど・・・。
どうであれ、きつい副作用のある抗がん剤自体が私には低リスクと出たことで、副作用が軽い経口抗がん剤だとしても補助療法したことで、どれだけの違いがあるのか?

病院側、医師たちは標準治療というガイドラインが確立して、それに沿って患者に投げかけてくる。
患者自身の治癒力や、免疫力など見ている医師はどれぐらいいるのだろうか?

確実に悪い質のがん細胞なら、ガイドラインに沿った治療を強く勧めるかもしれないけれど、私のような全てがどっち付かずの結果の場合、補助治療も言い切れないものがあるのかもしれません。

ここまで結論を出すのに苦しい1か月を過ごし、思考も行ったり来たりグラつきながら、おかしな方向へと向かっていることに気付かず、人は悲しみ苦しみ不安から怒りがこみ上げるという、人間の感情の移り変わりを経験してました。

最終結論は、ホルモン療法だけの治療を受けているところです。

結果、結論を出す時間が1か月もかかったけれど、その1か月という時間は私には必要な時間であり、それまで私の意思が経つのを待ってくれた主治医に感謝しなければならないことでした。

何も疑うこともなくガイドラインに沿うように勧めることなく、私の意思を優先してくれたことはありがたかったです。

医師と患者とのコミュニケーション力
短い時間の中で、重大な命の話をどのように進めるかは今後の課題だと思った出来事でした。