乳房再建術を選択しなかった理由

 

両側乳房全摘出手術を受ける前に、看護師さんから念を押された乳房再建術。

主治医から温存は難しいと言われた瞬間に
『全摘でお願いします!』と言い切った私を気遣って話をしてくれました。

こんにちは
トリニティサロンの三田です。

自分でもよく考えての全摘をなぜ止められるんだろうか?と思っていましたが、
数多い患者さんたちと向き合ってきた中で、起こりえる状況に備え、いろんな質問や繰り返し問いを向けてきます。

後戻りできない治療に対し、しっかりとした意思を何度も何度も確認する医療現場。

乳房再建は
一次再建(乳房切除と同時に乳房再建手術を行う、同時再建)と
二次再建(手術や化学療法などの治療が一段落した後に行う)とがあり急ぐ話ではないのだけれど、
私の場合…
思春期女子(当時中1)に突入したばかりの娘がいるからか、娘への対応にじっくりと考えてほしいと伝えてきました。
お母さんの容姿が変わることへの精神的なダメージは大丈夫なのか?
といったことでしょうか・・・。

親であれば、考えないことはない!
だけど…
娘のために胸を作るのか…?
私は最初からそんな考えはなく、娘に報告という形でただ胸がなくなるということだけを伝えました。


正直、胸がなくなることへの不安や悲しみより、すっきりすることへの期待しかなかったのです。
おかしな話なんですけど・・・。
なんかね、胸という女性の象徴みたいなものがなくなったら、本質を見てくれるのではないだろうか?
素の本来の自分でいられるのではないか?
と、不思議な思いが沸いたんですよ。
いわゆるジェンダーレスの域でしょうか。
乳房に腫瘍があることでカラダにメスを入れる気持ちと、その行為で今まで感じてきた複雑な思いから解放されるんじゃないか?と、入り混じった思いが行ったり来たりしていました。

私の救いは
今まで美容の世界で生きてきたので、美容は作れることで乳房を失う不安材料はなかったのです。
それに、
仮に腕のいい医師に胸を作ってもらったとしても、納得が行くか行かないかも賭けになる。
そんなのも嫌だし、無いなら無いの魅せ方なんていくらでも見つけられる!
ブラからも解放される!
っていう期待だったんですよね。

それに
再建術に対し、カラダに別の傷跡(自家再建の場合)を作り、時間もお金もかかってくる。
今は保険適用され、メリットもありますが、
私の環境にはそれがデメリットにしか思えなかったのです。
そんな理由から私は乳房再建術を選びませんでした。

両側胸を失う状況に、誰もが喪失感を感じるのかもしれません。
でも、人にはそれぞれの背景があり、その影響で感じ方も人それぞれです。

私は新たなカラダを受け止める気持ちの方が喪失感よりも大きかったのです。

これは人生折り返し地点からの新たな人生の始まり
そう私は受け止めていたのです。

50歳過ぎてからのカラダ作り
服選びに幅が広がり、見据える先の可能性は生きる意味を見出すんだと感じています。
老いに逆らうことでもなく、病に怖がることでもなく、
それでも美を意識し、本当の美を追求する機会をいただいたのだと思います。

今では人工閉経をして女性ホルモンもなくなった私のカラダですが、脳への刷り込みは意識の問題なのかもしれませんね。